はじめに
行政書士試験では、判例から問題が出題されます。 判例を読んでも「判旨がよくわからない」、「記憶に定着しない」と感じる人もいるでしょう。
実際、過去に行政書士試験でも出題された「記帳所事件」について解説します。
最初に、記帳所事件の判決の結果をわかりやすくいうと以下の通りです。
判決:最高裁平成元年11月20日 ▶天皇に民事裁判権は及ばない。
この記事は以下のことについて嚙み砕いて解説します。
- 記帳所事件の概要
- 争点はなにか
- 判旨
ぜひ最後までお読みください。 ※法律解説であり、個別の法律相談ではありません。
記帳所事件の概要
記帳所事件とは、1988年9月23日から1989年1月6日までの期間、千葉県知事が昭和天皇の病気快復のために公費で県民記帳所を設けたことが事の始まりです。
公費での県民記帳所の設置に千葉県民の男性が、「違法な公的支出」であり、「千葉県に損害を与えた」と住民訴訟を提起しました。
男性は、天皇に対し「昭和天皇が記帳所設置に要した公的費用は不当利得だ」として、不当利得返還請求を皇位継承した平成天皇に求めました。

▶この事件は、公費支出の適法性が争われた事例の一つです。
住民が自治体の財務をチェックする制度として、住民監査請求や住民訴訟があります。
制度の流れから理解したい方は、こちらの記事もあわせて確認してみてください。
争点はなにか?
この裁判の争点は、天皇を民事裁判の被告にできるのか(民事裁判権が及ぶのか)という点です。 裁判の流れは下記のようになりました。
第一審(千葉地方裁判所) →天皇に対する訴えは却下 ↓ 控訴審(東京高裁) →控訴棄却 ↓ 最高裁 →上告棄却
当時は下記のような説がありました。
- 完全免責説
- 限定的責任説(私人行為なら責任)
この裁判で最高裁が決着を付けた形となりました。
判旨をわかりやすく解説
この裁判の判旨をわかりやすく解説します。
第一審(千葉地方裁判所)
●記帳所で天皇の病気快復の見舞いの記帳を国民から受けるのは、天皇が象徴たる所以。 →よって公的。 ●天皇の国事行為は内閣が責任を負う。 →天皇に民事裁判権は及ばない
控訴審(東京高裁)
●天皇とはいえ、私法上、行為をなすことはあるから民法その他法律の定めに従うことになる。 →だが、直ちに民事裁判権が及ぶとは解せない。 天皇に民事裁判権が及ぶと、民法及び行政法の被告適格を持ち、これは、天皇は日本の象徴である憲法上の地位とそぐわない。
最高裁
●天皇は日本の象徴という特殊な地位 ●天皇の公的行為の責任は内閣が負う ●記帳を受ける行為は象徴としての公的行為
→天皇には民事裁判権が及ばない

まとめ
記帳事件について、私なりに簡単に解説しました。
この判例は天皇は象徴という憲法上の特殊な地位について最高裁で決着がついた重要判例と位置づけされています。
重要なことを下記にまとめました。
- 天皇は象徴という特殊な地位
- 天皇に民事裁判権は及ばない
最後までお読みいただきありがとうございました。


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