はじめに
「行政法の一般原則ってなに?」
「そもそも行政法ってなに?」
「憲法や民法のように条文はないの?」
など、行政法を学び始めると最初に通る道だと思います。
そもそも憲法や民法と違い、行政法という法律は存在しません。 行政法とは、行政に関する法律のことを総称して呼ばれています。
では、「行政法の一般原則とはなんなのか?」と思われる人もいるかもしれません。
行政法の一般原則とは、条文に明記されていなくても、判例によって確立された行政を縛るルールです。
とくに行政書士試験では頻出分野であり、
- 信義誠実の原則(信義則)
- 比例原則
- 平等原則
- 裁量権の逸脱・濫用禁止の原則
が重要になります。
行政法の一般原則は、主に判例の積み重ねで、確立した原則です。
この記事では、行政法初学者にもわかりやすく、判例を紹介しながら、行政法の一般原則について解説していきます。
法律による行政の原理と、行政法の一般原則の関係
行政法の一般原則を理解するためには、「法律による行政の原理」との関係を押さえることが重要です。
法律による行政の原理とは、
・法律の優位の原則
・法律の法規創造力の原則
・法律の留保の原則
という原則をいい、行政は法律に基づいて行われなければならないという枠組みを示します。 法律による行政の原理は、憲法41条・73条を根拠とする近代立憲主義の表れになります。
これに対し、行政法の一般原則は、法律に基づいている場合であっても、行政の内容が合理的であることを要求する実質的な統制原理です。
つまり、
法律による行政の原理
→ 行政の“根拠”を統制する原理
行政法の一般原則
→ 行政の“内容”を統制する原理
という関係になります。

行政法の一般原則とは?
行政法の一般原則とは、主に国や地方公共団体が、国民や事業者に対して行政活動を行う際に守るべきルールです。
行政法の一般原則は、行政の裁量で国民の権利利益の侵害がされないための、防御手段になります。
一般原則の代表例の、
- 信義誠実の原則(信義則)
- 比例原則
- 平等原則
- 裁量権の逸脱・濫用禁止の原則
について解説と判例紹介します。
信義誠実の原則(信義則)とは
信義誠実の原則(信義則)は民法1条2項に定められている法律ですが、行政も信義則に拘束されます。
信義則は、行政と国民の間でも、お互い相手の信頼を裏切らない、誠実な行動が求められます。
具体的には、
- 相手の正当な信頼を裏切らないこと
- 一度示した見解を合理的理由なく覆さないこと
- 誠実に手続を進めること
を行政活動に求める原則です。
重要判例:
▶課税処分と信義則(最判昭和62年10月30日)についてはこちらの記事で解説しています。 →課税処分と信義則とは?最判昭和62年10月30日をわかりやすく解説【行政書士試験】
▶公務員の失職事由と信義則(最判平成19年12月13日)
比例原則とは?
比例原則とは、「行政目的を達成するためにとる手段は、必要最小限度の手段でなければならない」という原則です。
- 適合性:用いる手段が、目的達成に適合していること
- 必要性:より侵害の少ない手段がないこと
- 相当性:公共利益と個人の権利のバランス
これら3つの要素で判断されます。
重要判例:
▶エホバの証人剣道実技受講拒否事件(最判平8.3.8) →信仰上の理由で、剣道実技を拒否した生徒に対し、学校側が代替措置を講じずに退学処分にするのは、社会観念上著しく妥当を欠くと判断した判例。
▶旭川学力テスト事件(最大判昭51.5.21) →全国学力テストの実施が、教育行政における国の関与の限界が争われた判例。 学力テストの実施目的と手段が、合理的かつ必要最小限度の範囲なら適法。
平等原則とは?
平等原則とは、「憲法14条の法の下の平等」を具体化した原則です。
国や地方公共団体の行政活動は、国民を合理的理由なく、差別することを禁止することを定めています。
重要なことは、
- 相対的平等:年齢、能力、状況などに基づいた合理的な区別は認められる
- 違法の基準:正当な理由が必要
です。
重要判例:
▶暴力団員と平等の原則(最高裁 平成27年3月27日) →公営住宅に住む、暴力団員に住居の明渡し請求ができるのかについて争われた裁判では、明渡し請求を認める判決がでています。
裁量権の逸脱・濫用禁止の原則
裁量権の逸脱・濫用禁止の原則は、行政権の行使が正当な範囲を超えて、逸脱する場合は許されないという原則です。
行政には広い裁量権が認められていますが、無制限に認められているわけではありません。
- 裁量権の逸脱:行政権が法律が認めた範囲の外にでること
- 裁量権の濫用:法律の範囲内であるが、使い方が不当であること
裁量権の逸脱・濫用があるかは、「社会通念に照らして著しく妥当を欠くかどうか」で判断されます。
裁量権については、行政書士試験でも重要な箇所となります。
重要判例:
▶マクリーン事件(最判昭和53年10月4日) →在留期間の更新を認めなかった法務大臣の裁量が争われた裁判です。 在留を認めないという法務省の裁量権が認められました。
国家賠償法との関係
行政の一般原則に違反すると国家賠償法1条に基づく損害賠償請求に発展する可能性があります。
国家賠償法1条は、公権力の行使に当たる公務員によって損害がでた場合、国に損害賠償請求ができる権利です。
要件は、
- 故意または過失
- 違法性
となります。
▶国家賠償法1条についてはこちらの記事で解説しています。 →国家賠償法とは?国家賠償法1条を噛み砕いて解説
▶国家賠償法重要判例 →市町村立中学教諭の賠償は誰が負担?最判平成21年10月23日をわかりやすく解説【国家賠償法3条2項】 →取消訴訟と国家賠償の関係をわかりやすく解説【最判平成22年6月3日 冷凍倉庫事件】
まとめ
行政法の一般原則は、憲法や民法にも関連する重要な項目です。
- 信義則=信頼保護
- 比例原則=三要素
- 平等原則=合理的理由の有無
- 裁量権=社会通念基準
行政法を学ぶうえで基礎になる部分なので、判例知識と共に学習することで理解しやすくなります。
行政書士試験では、判例を中心に多く出題されています。

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