はじめに
行政処分で不利益を受けた場合、行政事件訴訟や国家賠償請求によって、違法な行政処分の是正や損害の回復を求めることができます。 具体的な例は
・取消訴訟で処分の取消しを求める
・国家賠償で損害賠償を求める
という2つの手段があります。
しかし、
- 取消訴訟で負けたら国家賠償はできないのか?
- 取消訴訟の判断は国家賠償に影響するのか?
- 両方同時にできるのか?
と疑問に思う人も多い分野です。
この記事では、最判平成22年6月3日冷凍倉庫事件をベースに、
・取消訴訟と国家賠償の関係
・判例のポイント
・試験で狙われる知識
をわかりやすく解説します。
取消訴訟と国家賠償の基本
取消訴訟とは、行政事件訴訟法で定められている抗告訴訟の一種です。 行政処分の違法性を争い、処分の取消しを求める訴訟です。
●目的:違法な処分をなくし、自己の法律上の利益の回復。
国家賠償とは、国や地方公共団体の違法行為によって損害が出た場合に、国や公共団体が金銭で回復する制度です。
●目的:国または公共団体による損害の補填
両者の違い
取消訴訟と国家賠償はそれぞれ、目的や出訴できる要件が異なります。 違いを下記の表にまとめました。
| 項目 | 取消訴訟 | 国家賠償 |
|---|---|---|
| 目的 | 処分の取消 | 損害回復 |
| 原告適格 | 法律上の利益を有する者 | 損害を受けた者 |
| 相手 | 行政庁 | 国・公共団体 |
| 判断対象 | 処分の違法性 | 行為の違法性・過失・損害 |
最判平成22年6月3日冷凍倉庫事件とは?
この裁判は、会社所有の倉庫の固定資産税を、誤った評価で価格を決定されたことについて、取消訴訟などで取消していない場合でも国家賠償請求ができるのかが問われた裁判です。

この判例の判決は行政書士試験で、何度も出題されています。
事案の概要
- 「冷凍倉庫」を「一般用の倉庫」として、評価し固定資産税を決定した。
- 倉庫を所有する法人は、決定された固定資産税を約15年納税していた。
- 倉庫が「冷凍倉庫」であることがわかり、評価価格を修正し、過去5年の固定資産税等を減額
- 法人は、過去の未還付となっている、過納金相当額を求めて国家賠償請求を出訴
- 法人は、倉庫の登録価格についての審査や取消訴訟などはしていない
争点
●審査の申出、取消訴訟などの手続をせずに国家賠償請求による損害賠償請求ができるか?
最高裁判旨
日本の司法の最終判断を示した、最高裁判所の判決です。
結果:できる。
①取消訴訟は、固定資産税に対するもの。 国家賠償請求は、公務員の職務上の法的義務に※違背(いはい)してされた処分に対するもの。 制度目的や要件が異なる。 ※違背:規則に背くなどの意味があります。
②違法な行政処分が理由に、国家賠償請求をする場合は、事前にその行政処分の取消訴訟や無効確認訴訟の判決を、受ける必要はない。
最判平成22年6月3日冷凍倉庫事件のポイント
取消訴訟と国家賠償は制度目的が異なります。
●取消訴訟は処分の取消しが目的です。 処分を受けた人の権利利益の救済が目的になります。
●国家賠償は、国民に生じた損害を金銭で償うことが目的です。 最判平成22年6月3日冷凍倉庫事件の事案の場合、公務員の過失により、違法に過大な固定資産税を算出し、損害を与えたことが問題となります。
行政処分が違法で、取消訴訟を経ていなくても国家賠償請求は可能。
行政書士試験で狙われるポイント
- 違法な課税処分に対する、取消訴訟の判決を受けなくても国家賠償請求は提起できる。
試験では過去に、多肢選択問題で問われています。
よくある誤解
●取消訴訟の判決が決定後にしか国家賠償請求はできない。 →取消訴訟の判決は必要ない
●取消訴訟で負けたら国家賠償も無理 → 必ずしもそうではない
関連知識
まとめ
取消訴訟と国家賠償は、制度と目的が違います。 以下のことを意識して学習を進めると理解が深まると思います。
- 目的が違う
- 判断基準が違う
行政書士試験では、制度の違い+判例理解が得点ポイントになります。

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