はじめに
国家賠償法3条は、
- 損害賠償負担の範囲
- 負担した場合の内部求償
を定めた法律です。
最判平成21年10月23日では、「中学教諭の賠償金は誰が支払うのか?」が争点になった判例です。
事案・争点・結論を簡単にまとめると、
- 都道府県が被害者に賠償
- その後、市町村に求償
- 最高裁→全額求償できる
この判例は国家賠償法3条についての最高裁の判決です。
事案の概要
事件の概要を時系列で見ていきます。
- 市町村立中学校の教諭が生徒に損害を与える
- 被害生徒が国家賠償法1条に基づいて損害賠償請求
- 都道府県が損害賠償金を支払い
- 都道府県が市町村に対して、求償請求
▶国家賠償法1条についての解説はこちらの記事をご覧ください。 →国家賠償法とは?国家賠償法1条を噛み砕いて解説

争点
この判例の争点はシンプルです。
都道府県は国家賠償法3条2項に基づき、市町村に「全額」求償できるのか?
国家賠償法3条2項では、損害賠償の責任ある者に対しての求償権が認められてます。
この事案では、設置者の市町村ではなく、都道府県が賠償金を支払っています。 そこで、都道府県が市町村に対して求償できるかが争点になります。
最高裁の判断
●結論
最高裁判断→全額求償できる
●理由
最高裁は次の点を重視しました。
- 給与の負担は都道府県
- 中学校の設置者は市町村
- 学校運営の経費は原則として市町村負担
- 国家賠償法3条2項は「最終的な費用負担者」に求償できる制度
つまり、実質的な費用負担者は市町村
→ だから、求償に応ずべき義務を負う。
という整理です。
深堀すると次のようになります。
- 市町村立学校職員給与負担法1条では、市町村立中学の教諭の給与負担は都道府県負担。 しかし、給与以外の費用負担の定めはない。
- 学校教育法5条は、学校の設置者は、法令に特別の定めがない場合は、学校の経費を負担すると規定。
- 地方財政法9条は、地方公共団体の事務にかかる経費は、同上ただし書き所定の経費を除いては、地方公共団体が全額負担すると規定。
- 各規程によると、市町村が設置する中学校の経費は、原則、市町村が負担すべき。
- これらの法令構造から、中学校運営に関する経費の最終的な負担者は市町村であると解される。
そのため、都道府県は市町村に対し全額求償できることになります。
国家賠償法3条2項とは?
条文の趣旨は、最終的に費用を負担すべき者に負担させるというもの。
- 国家賠償法3条1項では、公務員の給与や、設置・管理の費用を負担した者も賠償責任を負うことを規定
- 国家賠償法3条2項では、費用を負担した者は、費用を負担すべき責任がある者への求償権について規定
▶国家賠償法3条についてはこの記事で詳しく解説しています。 →国家賠償法3条~6条とは?誰が責任を負うのかをわかりやすく解説【行政書士試験対策】
試験対策ポイント
行政書士試験で狙われやすいポイント:
- 都道府県がまず賠償主体になる
- しかし、最終負担は市町村
- 3条2項により全額求償可
「求償は制限される」と混同しないこと。
※公務員個人への求償とは別問題。
この判例の意義
この判例が示したのは、
- 国家賠償法3条2項は“費用の最終帰属”を決める条文
- 自治体間の内部負担調整のルール
つまり、被害者救済と内部調整を分けて考える構造が明確になりました。
試験対策
Q:教諭の給与を負担する都道府県が損害賠償金を被害者に支払った場合、学校の設置主体の市町村は費用をしなくてよいか?
A:都道府県は、学校の設置主体である市町村に全額求償することができる。
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まとめ
最判平成21年10月23日の判決は、
- 設置者と給与負担者が違う場合の費用負担
- 求償の全額性
を明確にした重要判例です。
本判例は、自治体間の内部求償の範囲を明確にしたリーディングケースになります。

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