はじめに
「通達って処分になるの?」
「行政のルールなのに、なぜ裁判で争えないの?」
行政法を学習していると、「通達」と「処分性」の関係で混乱することがあります。
結論からいうと、
通達それ自体には処分性は認められません。
この「墓地埋葬通達事件」は、
「通達=処分ではない」という原則を確認する重要判例です。
この記事では、
- 事案の概要
- 争点
- 判旨
- なぜ処分性が否定されたのか
を、初学者でも理解できるようにやさしく解説します。
この記事を読めば、「通達と処分の違い」がはっきり理解できます。
▶先に処分性の基本を確認したい方はこちら
→ 処分性とは?わかりやすく解説
墓地埋葬通達の処分性とは?(結論)
結論:通達そのものには処分性は認められない
理由は、国民の権利義務に直接影響しないためです。
つまり、
取消訴訟の対象にはならない
ということです。
最高裁は、
通達は国民を縛るルールではないから、裁判の対象にならないと判断しました。
▶処分性の判断基準についてはこちら
→処分性の判断方法とは?3ステップでわかりやすく解説
図解:結論

事案の概要
厚生省(当時)が、墓地埋葬に関する通達を出しました。
通達とは、
上級行政機関が下級行政機関に対して出す内部的な指示
のことです。
この通達に基づいて行政運用が行われ、それに不満を持った者が争いました。
- 厚生省が各都道府県に対して、墓地埋葬法13条の解釈について、通達を出す
→通達の内容(埋葬を希望する人が他宗教の信者であることを理由に埋葬を拒めない) - 「真言宗」の信者のみを埋葬してきた寺院が反発
- 寺院側が、通達によって実害が出ていると通達の取消しを求めて提訴
- 第一審:処分性なしとして訴えの却下判決
- 第二審:第一審を支持し却下判決
- 寺院側が上告
争点
この判例の争点は、
「通達に処分性があるか?」
になります。
つまり、
「通達そのものが取消訴訟の対象になるか?」
になります。
判旨
最高裁は、処分性を否定しました。
■理由
- 通達は行政内部の指示にすぎない
- 国民の権利義務を直接変動させるものではない
したがって、抗告訴訟の対象となる「処分」には当たらない。
さらに最高裁は、
- 裁判所は通達に拘束されることはない
- 通達に示された独自の解釈が可能
- 法の趣旨に反するときは独自にその違法を判断できる
としました。
なぜ処分性が否定されたのか
通達の処分性が否定された理由が一番重要になります。
ここを理解することで、通達についての理解が一気に深まります。
ポイント①:通達は内部ルール
通達は、行政間のみに効力があります。
- 上級機関 → 下級機関への指示
- 外部(国民)には直接向けられていない
そのため、国民に直接影響していません。
行政内部において効力を持つにとどまります。
ポイント②:権利義務を動かしていない
実際に影響を与えるのは、通達に基づく“個別の処分”です。
通達は、行政間のみに効力があります。
通達そのものが、国民の権利義務を動かしているわけではありません。
図解:本質

結論:
処分性は“行為単位”で判断する
極端な例:学校の「先生用指導マニュアル」
事案:校長から先生に、生徒に対する「先生用指導マニュアル」が渡される。
- マニュアル(通達):
「茶髪の生徒には放課後掃除をさせること」と書いてある。 - 生徒の主張:
「このマニュアルは自由の侵害だ!裁判でマニュアルをボツにしろ!」 - 裁判所の回答:
「マニュアルは先生同士のルール。実際に掃除させられてから訴えなさい」
このように、マニュアルの作成自体を訴えることはできず、実際に、権利義務に直接影響しない限り処分性は認められません。
通達と処分の違い

通達と処分の違いを理解することが、重要です。
■通達
- 内部ルール
- 国民に直接影響しない
→ 処分性なし
■行政処分
- 国民に直接向けられる
- 権利義務を変動させる
→ 処分性あり
流れは似ていますが、全くの別物です。
▶通知・通達についてはこちら
→ 通知・通達とは?処分性との違いをわかりやすく解説
ポイント整理
この判例のポイントは、
- 通達は処分性なし
- 理由は「内部ルール」
- 実際に争うのは個別処分
処分性は“個別の行為ごと”に判断されます。
試験対策
行政書士試験に重要なことは以下の3つになります。
- 通達の性質
→行政組織内部の命令 - 処分性の否定
→原則、通達に対しての取消訴訟は認められない - 裁判所への効力
→裁判所は通達の効力を受けずに、独自の解釈で判断できる
墓地埋葬通達事件は行政書士試験で頻出判例です。
よくある誤解
- 通達の内容が憲法や法律に違反しているから、裁判所に訴えればその通達を無効にできる
→ ×通達そのものを裁判で訴えることはできない - 通達は法律のように国民を縛るルール
→×最高裁は、通達は行政内部のルールで法規制はないと判断
学習のコツ
この判例の学習のコツは、
「誰が誰に対して影響を与えているか?」
を理解することです。
他の処分性の判例と比較することで、処分性の性質を理解することも重要です。
処分性が認められた判例はこちら
▶【最判平成17年7月15日】病院開設中止勧告事件をやさしく解説|行政指導と処分性
▶土地区画整理事業計画は処分?処分性が認められた理由をわかりやすく解説【最大判平成20年9月10日】
処分性が認められなかった判例はこちら
▶都市計画(用途地域)指定の処分性とは?わかりやすく解説|なぜ処分にあたらないのか【最判昭和57年4月22日】
まとめ
通達は役所内部の「マニュアル」にすぎず、裁判で訴えるための処分性には当たらず、裁判所もそれに縛られません。
大事なのは、「誰に向けられている行為か」で判断するのがポイントです。
- 通達そのものは処分性なし
- 権利に影響するのは個別処分
- 判断は行為ごとに行う
「通達=内部ルール、処分=外部への法的効果」この対比が重要です。
処分性については、重要判例が多く、個々の判例を学ぶことで理解が深まります。


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