公務員の失職事由と信義則とは?最判平成19年12月13日をわかりやすく解説【行政書士試験】

判例解説

はじめに

行政書士試験では、信義則(信頼保護原則)がどの場面でどこまで適用されるのかが問われます。

とくに公務員の「失職」と信義則の関係を扱った重要判例が、最判平成19年12月13日です。

「解雇と失職って違うの?」

「なにが信義則違反と主張しているの?」

「長い間働いても、法律が優先される?」

など疑問に思う方もいるかと思います。

この記事では、最判平成19年12月13日をわかりやすく事案を整理して解説します。

まずは、結論:

  • 失職についても信義則の主張は理論上可能ですが、失職は法律の規定により当然に発生する制度であるため、信義則の適用は極めて例外的とされました。

なぜか?:

  • 本人が事実隠蔽をしていた
  • 国家公務員法第76条および第38条1号の欠格条項

公務員の失職は法律上当然に生じる制度であり、信義則による救済は原則として認められにくいです。

信義則は万能ではなく、法律によって当然に生じる制度ではその適用が極めて限定されることを示した判例です。

信義則の基本はこちらの記事をご覧ください。
行政法の一般原則とは?判例紹介でわかりやすく解説【行政書士試験対策】

事件の概要

  1. 郵便局員採用前に禁固以上の刑に処される
  2. その後、刑罰の事実を黙って採用試験を受ける
  3. 郵便局員として採用
  4. 約27年間、郵便局員として勤務
  5. あるきっかけで、採用前に刑罰を受けていた事実が判明
  6. 国家公務員法の欠格事由に該当し失職
  7. 27年も経ってからの失職通知は、信義則に反して無効だと主張

※禁固以上の刑は執行猶予付きでも国家公務員法の欠落事由に当たります。

わかりやすくまとめると

  • 誰が?                                                       →郵便局員が
  • 誰の?                                                                 →日本郵政公社の
  • 何に?                                                  →自身の失職に
  • 何で?                                                           →27年間も勤めていての失職は
  • どうした                                                  →信義則に反すると、公法上の当事者訴訟を起こした                                                                                       

となります。

解雇・免職・失職の違い

ここで、解雇と免職、失職の違いを下記表にまとめました。

項目解雇免職失職
主な対象民間企業の従業員公務員公務員
発生理由契約解除(制裁含む)制裁または適格性欠如法令の欠格事項に該当
処分の性質雇用主の意思表示任命権者の行政処分自動的・当然に発生

最判平成19年12月13日のケースでは、採用される前に欠格条項があります。                   

欠格事由がある者は本来公務員になることができません。

しかし、実務上は「事実上の公務員」として扱われ、
それまでの職務行為や給与は有効とされますが、退職金などの権利は失います。                   

争点

公務員の失職事由と信義則【最判平成19年12月13日】の争点は、

  • 本人が隠して27年間も勤めていた場合でも、当然失職が適用されるのか
  • 法律上当然に発生する「失職」に対して、信義則を理由に効力を否定できるか

となります。

最高裁の判断

最高裁は、

  • 長期間の勤務や役所の認識不足は無関係
  • 失職は法律の規定により当然に生じる
  • 行政庁の裁量による処分ではない
  • したがって信義則の適用は極めて限定的

と判断しました。

重要なこと:

失職は行政処分ではなく、法律効果の当然発生であるということです。                                    つまり、失職は行政処分ではないので、抗告訴訟などでは争うことできません。

失職に納得ができない場合は、当事者訴訟で争うことになります。

なぜ信義則適用は難しいのか?

理由は3つです。

  • 法律の明確な規定
  • 公務員制度の安定性
  • 公平性の確保

失職事由は国家公務員法に規定されている法律です。

法律を無視するほどの、特別な事由がないかぎり、公平性の確保が保てなくなるため、信義則の適用には慎重にならざるを得ません。                   

判例の意義

この判例の意義は、

  • 当然失職の絶対性
  • 信義則適用の限界
  • 事実上の公務員理論とのバランス

です。

信義則が適用される余地を完全に否定はしないが、法律効果が当然発生する場合には極めて例外的であると示した点。

退職金や身分などの本人自身の権利については一切認められていません。

信頼保護原則の限界を示した判例です。

行政書士試験対策ポイント

行政書士試験でのポイントは以下の通りです。

  • 失職は「法律上当然に発生」
  • 行政処分ではない点が重要
  • 信義則は例外的
  • 信頼保護=万能ではない

行政書士試験では「失職は行政処分ではない」という点が頻出です。

国家賠償との関係

もし、「本来は失職していない(条件を満たしていない)人」を、役所が「あなたは失職した」と誤認して追い出し、給与の支払いを止めるなどの損害を与えた場合、国家賠償法1条の問題に発展する可能性があります。

国家賠償法1条についてはこちらで解説しています。                                 →国家賠償法とは?国家賠償法1条を噛み砕いて解説

関連判例

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まとめ

公務員の失職にも信義則の主張は可能ですが、法律効果が当然に発生する制度では、その適用は極めて限定的です。

行政書士試験では、

  • 失職=当然発生
  • 信義則=例外的

この対比を理解することが重要になります。

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