はじめに
「行政指導って行政処分と何が違うの?」
「行政からのお願いは断れるの?」
行政書士試験の勉強をしていると、
- 行政指導
- 行政処分
- 行政手続法
- 行政法の一般原則
などの用語が出てきます。
その中でも行政指導は、行政法の重要論点の一つです。
結論からいうと、
行政指導とは、行政庁が国民や事業者に対して任意の協力を求める行為です。
行政処分のような強制力はありません。
しかし実際には大きな影響力を持つため、行政手続法によって一定のルールが定められています。
この記事では、
- 行政指導とは何か
- 行政処分との違い
- 具体例
- 行政手続法との関係
- 行政書士試験の重要ポイント
を初心者向けにわかりやすく解説します
行政指導とは?【結論】
結論:
行政指導とは、行政機関が一定の行政目的を実現するために、相手方の任意の協力を求める行為です。
行政手続法2条6号では、
行政機関がその任務や所掌事務の範囲内で一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう
行政手続法2条6号
と定義されています。
難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば、
「行政からのお願い」ということです。

行政指導の具体例
行政指導にはさまざまな例があります。
例えば、
- 騒音を減らすよう求める
- 工事計画の見直しを要請する
- 事業者に自主回収を求める
- 衛生管理の改善を求める
などです。
行政庁は、
「こうしてください」と求めますが、法律上は強制できません。
行政手続法が適用されない行政指導もある
行政指導には原則として行政手続法が適用されます。
ただし、
行政手続法3条で適用除外とされる行政活動については、行政指導に関する規定も適用されません。
- 地方公共団体が主体の行政指導
- 警察・検察・税務・学校・刑務所などの画一的なルールになじまないケース
- 役所同士の行政指導
は行政手続法の適用除外です。
役所同士の行政指導でも、一般の民間人と全く同じ立場(固有の資格)で受ける場合は行政手続法が適用されます。
例:
- 公用車の購入後のリコール
- 役所の建物を建てるときの建築指導
などです。
行政処分との違い
ここは行政書士試験でも頻出です。
| 行政指導 | 行政処分 |
|---|---|
| お願い | 命令 |
| 強制力なし | 強制力あり |
| 任意 | 拒否できない場合がある |
| 行政手続法でルールあり | 行政手続法で手続あり |
行政処分
行政庁
↓
命令・許可取消し
↓
法的拘束力あり
↓
従わなければ不利益
行政指導
行政庁
↓
お願い・勧告・助言
↓
法的拘束力なし
↓
従うかどうかは任意
例えば、
営業停止処分は行政処分です。
一方、
「営業方法を改善してください」という要請は行政指導です。
なぜ行政指導が問題になるのか
「強制力がないなら問題ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし現実には、行政庁には大きな権限があります。
例えば、
許認可権限を持つ行政庁から「協力してください」と言われると、実質的には断りにくい場合があります。
そのため、
形式上は任意でも、実際には強い影響力を持つことがあります。
そこで行政手続法は、行政指導について一定のルールを設けています。
行政手続法による規制

行政指導は任意協力が原則
行政指導に従うかどうかは相手方の自由です。
任意の協力を求める行為であるため、行政処分のように法律上の根拠がなければできないものではありません。
もっとも、行政指導も行政手続法などのルールに従って行う必要があります。
行政庁は、
行政指導に従わないことを理由として、不利益な取扱いをしてはいけません。
行政指導の趣旨などを明らかにする
行政指導を行う場合、行政庁は相手方に対して、
- 趣旨
- 内容
- 責任者
を明らかにしなければなりません。
行政指導の中止等の求め
違法な行政指導を受けた場合、相手方は行政庁に対して、行政指導の中止などを求めることができます。
これは平成26年改正で導入された制度です。
行政指導と行政処分を比較すると理解しやすい
| 項目 | 行政指導 | 行政処分 |
|---|---|---|
| 強制力 | なし | あり |
| 法的拘束力 | なし | あり |
| 相手方の同意 | 不要(任意協力) | 不要 |
| 例 | 勧告・助言 | 営業停止・許可取消し |
行政書士試験では、この違いを問う問題がよく出題されます。
病院開設中止勧告事件との関係
行政指導を学ぶうえで有名なのが、
病院開設中止勧告事件【最判平成17年7月15日】です。
この事件では、
病院開設について中止を求める行政指導の勧告が処分に当たるのかが問題になりました。
健康保険法では、開設中止勧告に従わずに病院を開設した場合、保険医療機関の指定を拒否することができます。
通常、行政指導には処分性はありません。
しかし本件では、勧告に従わないと保険医療機関の指定を受けられず、病院経営が極めて困難になることから、例外的に処分性が認められました。
この判例は、例外的に行政指導に処分性が認められた重要判例です。
▶【最判平成17年7月15日】病院開設中止勧告事件をやさしく解説|行政指導と処分性
行政書士試験の重要ポイント
重要ポイント①
■ 行政指導は任意
強制力はありません。
相手方が従うかどうかは自由です。
重要ポイント②
■ 行政処分とは異なる
行政処分には法的拘束力があります。
行政指導にはありません。
重要ポイント③
■ 不利益取扱いは禁止
行政指導に従わなかったことだけを理由に、
不利益な扱いをしてはいけません。
重要ポイント④
■ 行政手続法の規制対象
行政手続法は行政指導についてもルールを定めています。
行政指導の学習で難しく感じた点
私が最初に学習したときは、「なぜ行政指導に行政手続法が適用されない場合があるか」ということが理解できませんでした。
しかし、
行政手続法が、「地方自治を尊重している」と考えれば納得ができました。
行政手続法はもともと「国のルール」として作られました。
地方のやり方に国がすべて口を出すと「地方自治」を侵害してしまうため、一部の行政指導については、行政手続法ではなく、各自治体が自分で作る「行政手続条例」適用されます。
「なぜ適用されないのか?」が理解できると、納得ができます。
行政書士試験想定問題
- Q行政指導には法的拘束力がある。
- A
誤り。
行政指導は相手方の任意の協力を求めるものであり、法的拘束力はない。
- Q行政庁は、行政指導に従わなかったことのみを理由として不利益な取扱いをしてはならない。
- A
正しい。
行政手続法の重要ポイントである。
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▶【最判平成17年7月15日】病院開設中止勧告事件をやさしく解説|行政指導と処分性
まとめ
行政指導とは、
行政庁が国民や事業者に対して任意の協力を求める行為です。
- 行政処分とは異なり強制力はない
- 行政手続法による規制がある
- 不利益取扱いは禁止されている
- 趣旨・内容・責任者を明らかにする必要がある
- 病院開設中止勧告事件などの判例とあわせて学ぶと理解しやすい
行政書士試験では、
- 「行政指導=お願い」
- 「行政処分=強制」
という基本的な違いをまず押さえたうえで、行政手続法による規制内容まで理解することが重要です。


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